こんにちは、アインズグループ代表の上原です。
前回の記事では、現場のスタッフにとって「聴く力」がなぜ必要なのかについてお話ししました。 組織の問題というのは、給料やルールといった仕組みそのものの不備ではなく、実はそこで働く人間との「関係性(心のつながり)」から生まれることが多いです。だからこそ、相手の話を「聞く」ではなく、「聴く」ことができるかどうかが、現場の強さを大きく左右します。
今回は、その「聴く力」がいちばん試される、現場の最もシビアな場面のひとつについて書こうと思います。それが、キャストによる当日欠勤、いわゆる「当欠」への向き合い方です。
現場では、当欠が起きると、どうしても売上や予約、シフトの穴の問題として見てしまいがちです。もちろん、当欠は現場に負担をかける行為です。
大前提、軽く見ていいものではありません。
ただ、そこで相手を責めるだけで終わってしまうと、関係性も信頼も一緒に壊れていきます。本当に見るべきなのは、その子がなぜ休んだのか、今どういう状態にあるのか。そして、その後どうすればもう一度前向きに出勤できるのか、ということです。単に女の子に寄り添い優しくするのではなく、組織を強くするための、向き合い方についてお話ししていきます。
出勤率100%の日は、ほぼ無かった
自分が現場に出ていた頃、キャストの出勤予定に対して、出勤率が100%になる日は、ほとんどありませんでした。
例えば、予定を50人組んでも実際に出勤するのは40人。30人組んでいても、23人。予定通りに人が揃わないことは、当時の現場では日常茶飯事でした。
その頃の自分は、当欠した子に対して、感情のまま注意したり、時には詰めるような責め方をしてしまうこともありました。もちろん、お店を守るためには、注意も必要です。
ただ、今振り返ると「今日の売上の穴をどう埋めるか」ばかりを見ていて、「その子がなぜ休んだのか」という、休んでしまった事実の背景までは全く見えていなかったように思います。
休んだことを正論で責め立てて、その場の空気が一時的に締まったとしても、それで関係性が良くなるわけではありません。むしろ、相手の心が閉じてしまえば、次の出勤にも、その先のやる気すら全てへし折ってしまう。
それに気がついてから、当欠への向き合い方が変わっていきました。
責めるか、許すかの二択ではない
ここで誤解してほしくないのは、当欠を責めないというのは、何でも許す、甘やかすという意味ではないということです。
当欠は現場に大きな負担をかけます。楽しみに待ってくださっているお客様の予約も、当日のシフトも組み直しです。だからこそ、組織としてのルールや厳格な線引きは絶対に必要です。本人の甘えが原因であれば、当然、強めに伝えないといけない場面だってあります。
ただ、どれだけ正しい正論やペナルティだけで、相手を詰めたところで、心を閉ざしてしまうだけです。大事なのは、ルールを突きつける前に、まず「その子の状態と、その裏にある背景」に目を向けることです。
「なんで休んだ?」と詰めるのではなく、「何があったのか」「今どういう状態なのか」「次にどうすれば前を向けるのか」を一緒に考える。責めるか、許すかの二択ではなく、線引きと承認の両方がある関わり方をする。
この業界で働くキャストは、何かしらの事情を抱えているケースも多いです。面接の時点から事情や状態を聴くようにしてきましたが、それでも最初から本音が出るとは限りません。
だからこそ、相手に対するこちらの尺度は、必ず「下から(謙虚に受け止める姿勢)」でなければならない。話を「聞く」のではなく、「聴く」姿勢を持つこと。正論を言いたくなる場面でも一度踏みとどまり、相手の状態を見ることが、スタッフの器を決めると感じています。
1日の「売上の穴」より、3カ月先の「やる気」を見る
短期的な数字だけで見れば、当欠はただの「売上の穴」であり、現場への「迷惑行為」にしか見えないかもしれません。
でも、長期的な目線で見れば、その日のスタッフの対応ひとつが、その子がこの先3カ月、現場でどれだけ爆発的に力を出して売上を作ってくれるかどうかの決定的な分岐点になります。
だからこそ、アインズグループでスタッフに意識させているのは、「普段はできている」という100%の信頼をベースに置くことです。
起こってしまったミスや当欠だけに目を向けるのではなく、「いつも真面目に頑張っているあの子なら、できるはずなのに。何かよっぽどのことがあったのか?」と、相手の背景を見にいくことが大切です。
「ちゃんと話を聴いてもらえた」
「自分のことを見てもらえた」
「事情を理解しようとしてもらえた」
その感覚は、安心感や信頼、居場所があるという感覚につながっていきます。逆に、理由も聴かれずに責められた経験は、「ここでは本音を言っても意味がない」という不信感すら与えてしまいます。
感情的に責めて終わるのは誰にでもできる簡単なことです。
でも、もう一度前を向けるように辛抱強く関わるには、こちら側の我慢と、相手を思う工夫が必要です。 組織には、毅然としたルールを持ちつつも、相手が次に向かえるための心の余白を残しておくことが必要です。
最後に
当欠対応は、単に勤怠管理ではありません。それまで築いてきた関係性を壊すのか、それとも、さらに強固な信頼に変えるのか。その分かれ道になる、最も重要な場面です。
必要なルールや線引きは絶対に持ちながらも、その子の背景・状態・気持ちを、一人の人間として見ること。承認と対話を通して、安心感や信頼、その上に成り立つ、お店への定着につなげていくこと。
それは一見、遠回りに見えて、実は現場をどこよりも強くする一番の近道だと確信しています。
アインズグループは、これからもキャストやスタッフ一人ひとりと正面から向き合い、誰もが安心して100%の力を出せる現場をづくりをしていきます。
アインズグループ代表 上原